徐々に涼しくなってきました。こういう時節は、古文書の手入れが捗ります。
今日は虫に喰われて開かない日記の手入れです。まだ虫が生きているのかどうか、外見からは分らず、放って置くとさらに喰われてしまうかもしれません。少し前から気懸りだった文書です。
さて、虫に喰われた古文書は、およそ虫穴の縁が癒着しているものです。
これを剥がすとき、パリッと乾いた感触でスラスラと剥せるなら、さほど難しくはありません。剥がすとき、パリッと剥がれず湿った感触で紙が引き吊るときは、手を止めた方が良いです。どちらにしても、決して無理に引っ張らないよう注意します。
剥がす時は焦らず慎重に、時間は幾らかけても良いという心持ちでゆっくりと剥がしていきます。また、剥がせそうになければそこは諦めて置く、といった選択もありです。文書の傷みが現状より進まないことこそ肝要です。
虫に喰われたところを剥がしていくと、虫のフンが散ります。その都度払っても良いですが、一枚一枚剥がしていくうちに穴から穴へフンが散らばりますから、最後に刷毛で刷く方が良いかもしれません。
シバンムシの残骸です。右端は脱皮(抜け殻)。
シバンムシは成虫になると、外界を求めて脱出します。梅雨のはじまり頃が脱出期でしょうか。
この残骸は、文書から脱出すること叶わず、そのまま骸となったものたちです。
また、古文書の上下端に注目すると分るように、端から幼虫が侵入して喰っています。
つまり、突如として内部に虫が発生するのではなく、外部から侵入しているのです。
虫に喰われた文書と、健全な文書とを一緒くたに収納して置くのはやはり危険なのでしょう。
今日は五冊の日記を手入れしました。
2018年9月12日 古文書専門店